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美味い棒(第3回) [ネタもの]

*例の如くしょーもない上に長いです。12月23日の記事を読んでいることが前提です。元ネタの二作品に敬意を表します。*

<アバンタイトル>
<第2話のあらすじ>
 先生がおかしなうまい棒スティックパーティーでうまい棒を切り裂いた。
千幻万化するその味わいにその場にいた全員が酔い痴れる。
だが、先生は更なる高みに一同を導こうとしていた。

<メインタイトル>「美味い棒-UMAIBOU-」


 駄菓子屋の店内。
先生がおかしなうまい棒スティックパーティーを構える。
あまりの集中振りに一同は一声も発することができずただ見守るのみ。
先程までと異なり掛け声無しでゆっくりとしかし淀み無く内筒(プッシャー)を奥まで押し込む。
一切の無駄を排した一連の動きに一同はただただ見惚れるばかり。
 
 先生はうまい棒を何本か立て続けに処理したところで深い息を吐き、おかしなうまい棒スティックパーティーを脇に置いた。
 先生の額から玉のような汗が噴出す。と同時に先生がへたり込むかのように椅子に座り込んだ。
中年「先生!!」
先生「中年、大丈夫だ。」
 
 皿の上に押し出されたうまい棒は何故か元の形態を保っているように見える。 
 眼鏡の男がスッと一歩前に進み出た。
眼鏡「ちょっと失礼。」
 眼鏡の男がうまい棒を少しつつくとうまい棒がパカッと二つに割れた。切断面は波打っているかのような幾何学的な外観を呈していた。
小娘「綺麗.....」
若僧「口惜しいが見事だ。」
Tommy「コレハバテレンノヒジュツデスカー?」
部長「........」

 若僧達がうまい棒に手を伸ばそうとすると先生がそれを制す。
先生「まだだ。」
先生は色の違ううまい棒同士を組み合わせ始めた。
本来は別々のうまい棒だったのに元からそうであったかのように円筒形に復す。
色の違いで境目が判別できるがパッと見、切断面は判らない。
一同に装いが新たになったうまい棒が配られ各々が口に含む。

 若僧が激しい驚愕を示す。
若僧「こ、これは何だ。今までに経験したことのない味だ。」
小娘「何て複雑な味わい。しかも一口ごとに味が変わるのよ。」
Tommy「オー、シッカリアジワウドコロカ、イッキニタベテシマイマシタ。ヤッパリワカゾウノボーナスハナシデース。」
部長「.......」
眼鏡「これは2つの料理を同時に味わえる、正に画期的です。」
キザ男「何だか、うまい棒が段々と好きになってきました。」

 先生が気力を振り絞って若僧に告げる。
先生「若僧、うまい棒にはまだまだ無限の可能性があるのだ。オマエはうまい棒をただ割っただけで満足してしまっていた。そんなことでは、真に人を感動させるには程遠いわっ!!このたわけっ!!」
項垂れる若僧。

 眼鏡の男が先生に近寄り語り掛ける。
眼鏡「ちょっと、それ拝見させていただいて宜しいでしょうか?」
先生がおかしなうまい棒スティックパーティーを眼鏡の男に手渡す。
先生「御覧いただこう。」
眼鏡の男はポケットから手馴れた様子で白い手袋を取り出し両手に嵌めてから受け取った。暫く眺めた後に続けた。
眼鏡「この刃の角度に秘密があるのですね。僕の目に狂いが無ければこちらは平成の名工、15代目寶富篤作と御見受けしましたが。」
先生「やはり、判っておられたか。」
眼鏡の男がやや形式ばった感じで御辞儀をした。
眼鏡「恐縮です。」
眼鏡の男が先生におかしなうまい棒スティックパーティーを返却した。

 若僧は言葉を失い、ただただ項垂れていたが、暫くするとパッと顔を上げ突然女主人に告げた。
若僧「ばっちゃん、ナイフを貸してくれ。」
女主人「こんなのしかないよ。」
女主人が若僧に刃渡り30cmは在ろうかという、ごついサバイバルナイフを手渡す。
シルベスタ・スタローンが扮するランボーが持っているようなアレだ。
キザ男が職業柄かちょっとナイフを警戒する。一歩前に踏み出そうとしたが眼鏡の男に制された。
小娘「若僧さん。いけないわ。幾ら先生に適わないからって暴力に訴えるのは。」 
若僧「そんなわけないだろっ。」
若僧はうまい棒の上部を斜めに削ぎ、側面に幾つか穴をこじ開けた。
先生「若僧めが、苦し紛れに何か始めよったわ。」
若僧は周囲の雑音を気にせず作業を進めていく。
若僧「よし。できたぞ。」
若僧の掌の上には見事に細工されたうまい棒が載っていた。
Tommy「オー、ナンデスカ、ソレ?」
部長「.....」

 若僧がうまい棒を唇に押し当てて息を吹き込むと音が出た。
「ビョー、ビョー、ピョー。プスー。」
哀愁を帯びた音色が断続的に流れ出した。
今度は逆に先生が驚愕する。
先生「うっ。」
小娘「若僧さん。凄いわっ。」
Tommy「オー、ボーナスノコトハカンガエナオシテアゲテモヨイデース!」
部長「何故か心に沁みる音色だね。」

 若僧が一通り演奏を終えた。続けて得意げに解説する。
若僧「うまい棒は喰べるだけじゃ無くてこうやって楽しむこともできるんだっ。因みに野菜や竹輪でもこれができるんだぜ。」

 先生が苦虫を噛み潰したかのような顔で席を立ち中年に告げる。
先生「中年、帰るぞっ!!おかしなうまい棒スティックパーティーは若僧、オマエにくれてやるっ!!せいぜい修練に励むが良いわっ!!」
中年「は、はい。」
中年がおかしなうまい棒スティックパーティーを若僧達のテーブルの上に置いた。
先生が店を出る。中年が去り際に済まなそうな顔をして若僧達の顔を見た。
中年「若僧様、申し訳ございません。」
先生「中年、何をしておるっ!!
中年が慌てて先生の後を追う。
程無くしてリムジンが店を離れた。

眼鏡「僕としたことが、少々長居をし過ぎました。そろそろお暇(いとま)しましょうか。」
 その時、突然携帯電話の着信音が響き渡った。眼鏡の男がポケットから携帯電話を取り出し耳にあてる。
眼鏡「はい、眼鏡です。................................、はい、そうでしたか。どうもありがとう。」
キザ男「眼鏡さん?」
眼鏡「落語好きさんからです。うまい棒の新製品は黒糖味だそうですよ。お土産にいただいていきましょう。」
 うまい棒黒糖味の袋を手にした眼鏡の男とキザ男が店を出て行こうとする。玄関を越えようとする寸前、不意に眼鏡の男がくるりと振り返った。右手の人差し指を立てている。
眼鏡「最後にもう一つ。そのおかしなうまい棒スティックパーティーですが、チョコレートには対応していないようですよ。御用心。じゃあ。」
 店の外から段々と遠ざかる眼鏡の男とキザ男の会話が聞こえる。
眼鏡「キザ男君。そもそもうまい棒というのは1979年、福岡.......」
キザ男「車の中でじっくり承ります。」
 スポーツカーが急発進して走り去る音が聞こえてきた。

 2グループが去った店内は静けさを取り戻した。
 テーブルの上にはおかしなうまい棒スティックパーティーが残されている。若僧がそれを手にして投げ捨てよう
 とした。
若僧「くそっ、こんなものっ!!」
 小娘がその手に縋り付きつつ諭す。
小娘「若僧さん、いけないわ。先生は貴方に期待しているからこそ、これを授けてくださったのよ。貴方はそれに応えなければならない筈よ。」
若僧「やつにそんな了見があるもんかっ!!」
小娘「先生はうまい棒に更なる可能性があることを私達に教えて下さったわ。次は貴方の番よ。」
若僧「くっ。」
 若僧は荒々しくおかしなうまい棒スティックパーティーをポケットに捻じ込む。
若僧「ばっちゃん。この店にあるうまい棒をありったけくれっ!!」
女店主「あれまー、1901本で19,960円(消費税込み)だよ。10円負けてあげるよ。」
 若僧が財布を勢い良く取り出して中身を見る。中には小銭が数枚と勝馬投票券(いわゆる馬券)が数枚。
若僧「.................、小娘さん、ゴメン....、ちょっと貸して下さい.......。」
 小娘はガクッとするがお札でパンパンに膨らんだ財布の中から諭吉さんを数枚無造作に引き抜いて若僧に渡した。
女主人「はい、御釣、50萬両だよっ」
若僧は残りの札を自分の財布に何の躊躇いも無く入れる。
程なくして若僧一行も店を出た。

 店の前でうまい棒を詰め込んだ袋を手にした若僧が吼える。
若僧「見てろよ。次こそは貴様をギャフンと言わせてやるっ!!」
 若僧の目に闘志の炎が燃え盛る。
小娘「そうよ、若僧さん。その意気よっ!!」

<エンディング>
 首都高を走るリムジン。後部座席には先程の先生。窓の外を眺めながら先生が呟く。
先生「若僧めが......、フン、小癪な真似を.........。」
 口調とは裏腹に先生の目には仄かな優しさが浮かんでいた。

--------------------完-------------------------


Cast
1)若僧:20歳代後半の青年。一応ネクタイ、スーツ姿だがちょっとだらしない感じの服装。「先生」と何やら確執があるのかも。やや単細胞な性格。先生の偉大さについては理屈の上では理解しているが、とある事情のために素直になれない。更に金遣いに問題があることが判明した。
2)連れの女:20歳代前半の可愛らしい女性。若僧に好意を持っている気配あり。先生を尊敬している。事情を理解した上で若僧には先生に正々堂々と立ち向かい乗り越えて欲しいと願っている。何故か金回りが良さそう。
3)Tommy:天然パーマの眼鏡をかけた小柄な40歳代男性。恐妻家のちょっとお調子者の中間管理職ではないだろうか。きっと子供は生意気なのだろう。
4)部長:口髭をたくわえた50歳代の温厚そうな男性。一行の上司にあたる。第1話で意外な技を披露するなど、ただのお飾りではないようだ。
5)壮年の男(先生):総髪で着物を着た恰幅の良い男性。60歳代だが気力が充実しているためか幾分実年齢より若く見える。陶芸、書、絵画等の全てに於いて一流と称されている芸術家のような気がする。喰もまた芸術なりとの信念を持っており稀代の美喰家としての側面もあるような。若僧に厳しい態度を取っているが、何やら事情があるようだ。言動からは若僧に期待を寄せている節が垣間見える。
6)御付の中年:角刈りの50歳代男性、先生の秘書的な役割をこなしている。若僧を様付けで呼ぶなど事情を知っている様子。指には包丁蛸が見える。
7)眼鏡の男:飄々とした立ち振る舞いながら何か一筋縄ではいかない予感を感じさせる謎の男。桜の代紋の入った手帳を某所で見せていたとの噂がある。様々なことに造詣が深く、まだまだ何かを隠していそう。
8)キザ男:眼鏡の男の同僚。ええ家(し)の坊(ぼん)のようだ。締眼鏡の男よりは常識を持ち合わせているが、庶民の事情には疎い。運転が荒い。
9)老齢の女主人:80歳に手が届こうかという年齢の割りに衰えを感じさせない外見を持つ。若僧にばっちゃんと呼ばれるなど親しい関係が伺える。先生と眼鏡の男とも関係が深い。奥から出してきたナイフは手入れは行き届いている物の相当に使い込まれており、つい最近も血を吸った形跡があるようなないような。夜中に隣町の公園で何か大きな袋を埋めていたとかいないとか。そういえば最近店のジーチャン見ないよね。
10)落語好き(特別出演):眼鏡の男の同僚。小太りでこちらも眼鏡を掛けている。逃げた女房に未練たらたららしい。

年末にこんなものを投稿していて、我ながら大いに疑問を感じるが...........................。
とりあえず皆様良いお年を。

美味い棒(第2回) [ネタもの]

*例の如くしょーもない上に長いです。12月23日の記事を読んでいることが前提です。元ネタの二作品に敬意を表します。*

<アバンタイトル>
<第1話のあらすじ>
 若僧一行が駄菓子屋でうまい棒を楽しんでいると、そこに先生が突然現れた。
火花を散らす両者の対峙。
謎の二人組みも絡んで事態は風雲急を告げる。
先生が手にした道具の正体は?

<メインタイトル>「美味い棒-UMAIBOU-」

 駄菓子屋の店内で若僧と先生の緊迫した対決が続く。
 中年が恭しく手提げ箱から出した道具を捧げ持ち、先生がそれを手に取った。
若僧「あれは一体?....」
Tommy「コレカライッタイゼンタイナニガオコルンデスカー?」
先生が道具の内筒を気合と共に引き抜く。
うまい棒1本をおもむろに袋から取り出し外筒の中に装填する。
引き続いて内筒を外筒内にセットした。
先生「これはおかしなうまい棒スティックパーティーというものだ。」
 フンッ、と軽く息を吐きつつ内筒(プッシャー)を押し込んでいくと反対側から均等に6分割されたうまい棒が姿を現した。
小娘が口に手を当てながら驚く。
若僧「ただのパフォーマンスだ。そんな道具に何の意味があるんだっ!!」
先生が若僧達をジロリと睨(ね)め付ける。ニヤリと口元がゆがんだ。

先生「まずは喰べてみるが良い。」
 先生が差し出したうまい棒のスティックを若僧達が口にする。
若僧達の顔に動揺が走る。
若僧「こ、これは.......ば、馬鹿な......」
小娘「まぁ、なんて軽やかな味わい。心が弾むようだわ。それに比べると若僧さんの割ったうまい棒は味に重さがあるわ。」
Tommy「ヒー、ウマイ、ウマイデース!!コンナウマイボウイママデタベタコトガアリマセーン!!」
部長「本当だ、明らかに味が違う。」
眼鏡の男とキザ男も御相伴に預かる。
眼鏡「ほほう、これはこれは。」
キザ男「ん?確かに味が違う気がしますね。」

先生「若僧、オマエにももう理由が判っただろう。」
若僧「くっ、形状が変わったことによる喰感の変化だっ!!」
先生「それだけかっ!!、だからオマエはいつまで立っても愚か者なのだっ!!」
若僧「くそっ!!」

 先生が中年に別のタイプのおかしなうまい棒スティックパーティーを催促する。
先生「中年、次だ。」
中年「はっ、もう準備してございます。」

 先生が幾度か掛け声を発した。
6分割に加えて4分割、8分割のうまい棒スティックがテーブルの上に姿を現した。 
均整の取れたスティックは喰べるのを一瞬戸惑わせるかの如く、美しい。
 
 若僧がそれぞれを口に入れ、小娘達が続く。
若僧「これもっ、これもっ、味が違う。これもだっ」
小娘「まぁ、細いほど味が軽いわ。舌の上で蕩けるようよ。」
Tommy「ドレモウマイデース!!」
部長「うーん、これほどとは。」

 考えを巡らせていた若僧が突然閃いた。
若僧「そうか、判ったぞっ!!」

 そこに突然眼鏡の男が割り込む。右手の人差し指を立てながら喋り出した。
眼鏡「全体の表面積と味の付いている部分の比率が関係しているのでは?」
キザ男「眼鏡さん、ちょっとは空気を読みましょうよ。」
眼鏡「キザ男君、僕は何か間違ったことを言いましたか?」
キザ男が皆に謝る。
キザ男「すいませんねぇ。この人いつもこうなんです。」
 
 先生が眼鏡の男に称賛の言葉を送る。
先生「そこの御方は物を良く御存知のようだ。」
若僧「お、俺だってそのくらい判ったさ。うまい棒が何だって言うんだ。こんなの只の駄菓子じゃないか。」
小娘「若僧さん......。」

先生「若僧、オマエはまだ恥の上塗りを重ねるのかっ。この程度だったとはな。」
先生の目に少し哀しげな色が浮かんだ。
先生は中年にまた道具を催促した。
先生「中年、アレも使うぞ。」
中年「でも、しかし、アレは.........」
 躊躇する中年を先生が一喝する。
先生「早くせんかっ!!」
中年「は、はい。ただいま」
 中年が先程の手提げ箱の底から新たな道具を取り出した。
 どうやらアダプターのようだ。
 
 眼鏡の男がキザ男の脇腹をちょんちょんとつつく。
眼鏡「キザ男君、どうやら面白い物が見れそうですよ。」
キザ男は緊張のあまり言葉を失いゴクリと唾を飲み込んだ。

女主人「あれまぁ、今日は賑やかなことで。」
女主人は慣れているのか、この緊迫が支配する店内で一人ニコニコしていた。

---------怒涛の第3回に続く-----------

Cast
1)若僧:20歳代後半の青年。一応ネクタイ、スーツ姿だがちょっとだらしない感じの服装。「先生」と何やら確執がある様子。やや単細胞な性格。
2)小娘:20歳代前半の可愛らしい女性。こちらは対照的にこざっぱりとしている。若僧に好意を持っている気配あり。
3)Tommy:天然パーマの小柄な40歳代男性。ちょっとお調子者の中間管理職ではないだろうか。
4)部長:口髭をたくわえた50歳代の温厚そうな男性。一行の上司にあたる。
5)壮年の男(先生):総髪で着物を着た恰幅の良い男性。60歳代だが気力が充実しているためか幾分実年齢より若く見える。陶芸、書、絵画等の全てに於いて一流と称されている芸術家のような気がする。喰もまた芸術なりとの信念を持っており稀代の美喰家としての側面もあるかも。若僧を見下した態度を取っているが、何やら事情があるようだ。
6)御付の中年:角刈りの50歳代男性、先生の秘書的な役割をこなしている。若僧を様付けで呼ぶなど事情を知っている様子。
7)眼鏡の男:飄々とした立ち振る舞いながら何か一筋縄ではいかない予感を感じさせる謎の男。桜の代紋の入った手帳を某所で見せていたとの噂がある。
8)キザ男:眼鏡の男の同僚。眼鏡の男の奇行に若干手を焼いている様子。ええ家(し)の坊(ぼん)のようだが運転が荒い。
9)老齢の女主人:80歳に手が届こうかという年齢の割りに衰えを感じさせない外見を持つ。若僧にばっちゃんと呼ばれるなど親しい関係が伺える。先生と眼鏡の男とも関係が深い。

美味い棒(第1回) [ネタもの]

*例の如くしょーもない上に長いです。12月23日の記事を読んでいることが前提です。元ネタの二作品に敬意を表します。*

<メインタイトル>「美味い棒 -UMAIBOU-」
<シーン1>
 東京下町俯瞰。徐々にズームインしつつ場面切り替え。
<シーン2>
 駄菓子屋外観。年季の入った外観。昭和40年代頃をイメージ。
 とある駄菓子屋の中から賑やかな声が聞こえてくる。
狭い店内にはテーブルが4つ程置かれ、周囲に安い丸いパイプ椅子が配置されていた。
テーブルの一つで男女4人組が歓談している。全員手にはやおきんのうまい棒。
テーブルの上にはうまい棒の空袋多数。

若僧「くー、この味、堪えられないネェ。この味を知らない人は可哀そうだよ。」
小娘「あら、懐かしいわ。子供の頃に良く喰べたのよ。」
Tommy「ヒー、ウマーイ、トテモオイシイデース!!」
部長「私も覚えがあるよ。」
若僧がくるりと後ろを振り向き老齢の女主人に声を掛ける。
若僧「ばっちゃん、うまい棒10本追加だ。味は全部バラバラでねっ。」

 駄菓子屋の店先にリムジンが滑り込んでくる。
少し遅れて黒いスポーツカーが逆方向から現れ同様に店先に駐車した。
スポーツカーはなかなかに荒っぽい運転で土埃が派手に舞う。

 リムジンの中からは総髪の恰幅の良い壮年の男が出てきた。
御付の中年が店の暖簾を手で押さえて総髪の男を案内しようとする。
御付の中年がふと店内を見て一瞬ギョッとした。
中年「わ、若僧様.....。」
続いて壮年の男が店内へ。
眼光鋭く威厳の漂う雰囲気に一瞬にして店内の空気が変化した。
壮年の男も若僧達一向に気付いた。
壮年の男「若僧、オマエは何処にでも顔を出すな、こんな場末の店にまで、目障りだ。」
若僧「貴様こそ、こんな猫の額のように狭い店に何の用だ。」
小娘「わ、若僧さん.....、先生に失礼よ。」
Tommy「ヒ、ヒエー」
部長「........」
店内に緊張が走る。

 やや遅れて黒いスポーツカーから降りてきた二人組みが店内に入ってきた。
一人は英国製のスーツに身を包んだ眼鏡の男。
相方はイタリア製のスーツで極めたキザ男。
キザ男は店に入るないなや、これまたイタリア製の高級ハンカチーフで鼻と口を押さえだす。
キザ男「僕はこういう店はちょっと苦手と云うか.....、埃っぽくて」
眼鏡「そもそも、君が勝手に付いて来たんじゃないですか。僕はこのお店に用があるんです。」
キザ男が小声で呟く、
キザ男「しっかりここまで送らせてるし。」
眼鏡がキザ男を一瞬睨むが、キザ男は素知らぬ顔でそっぽを向く。
店内の緊張を敏感に感じ取ったのか、
眼鏡「おやおや、これはこれは...キザ男君。この流行らない時の流れに忘れさられたかのようなお店に妙に活気が溢れているようですよ。」
 店内の先ほどの会話が外に漏れていたのか。
キザ男「眼鏡さんの言い方が一番失礼だと思います。」
眼鏡「それは失敬。」

 女主人が壮年の男(以下、先生)に話しかける。
女主人「先生、今日は何になさいますか?ソース煎餅、それとも梅ジャム?、あんこ玉の良いのが入ってますよ。」
 先生の眼光が一際鋭さを増した。
先生「若僧と同じ物を貰おう。」
女主人「はい、ただいま準備いたします。」

 続いて、
女主人「眼鏡さんはどうされます?」
眼鏡「僕はいつもの。それからうまい棒を2つ。味はおまかせします。」
 キザ男がボソッと呟く。
キザ男「こっちも常連なんだ…。」
眼鏡「何か言いましたか?」
 キザ男がちょっと大袈裟に手を上げて顔の横で両の掌を前に向ける。
キザ男「いえ、何にも。」

 先生にうまい棒数本が渡され、眼鏡の男にはうまい棒の他に駄菓子が大量に手渡された。
呆れた様な顔でキザ男が眼鏡の男を見る。
眼鏡「おや、キザ男君、君は何も頼まないのですか?」
キザ男「無いんだ、僕の分。」
キザ男は商品をザッと見渡すがドギツイ原色バリバリの駄菓子達を見てウッ、と小さく呻き声を上げた。
眼鏡の男はよっちゃん酢イカをしゃぶりつつ涼しげな顔でキザ男を見ていた。
キザ男「じゃあ、僕もうまい棒、というのを2本。おまかせで。」

 暫く静かなおやつタイムが流れる。
若僧「あんなの無視してこっちはこっちでやりましょう。」
若僧が得意げに続ける。
若僧「小娘さん、見ててごらん。こうやって、うまい棒の袋を押すと.....、後は仕上げをごろうじろっと。」
若僧がテーブルの上に置いたうまい棒を圧迫してから袋を開けると太さはバラバラながら中身が縦に4つに割れていた。
小娘「若僧さん。凄いわ。」
Tommy「ホ、ホヘーッ!!」
 部長がちょっと子供っぽい笑みを浮かべた。更に部長がうまい棒を軽く握って底部をいきなり膝にパンと打ち付けると包装上部が開いてうまい棒が中から顔をニュッと覗かせた。
小娘「あら、それは?」
部長「昔こういう開け方が流行ってね、久し振りにやってみたが上手くいって良かったよ。」
Tommy「ワタシモヤッテミタイデース!!!」
Tommyがうまい棒を力任せに掴む。見るからに力み過ぎている上に何故か袋は既に一部破かれている。
若僧「Tommyさん、そんなに力を入れたら....あ、あ、あ、言わんこっちゃない。」
Tommyは膝に袋を打ちつけたが何も起こらない。なおかつ袋を完全に開けてみると中身はバラバラ。
Tommy「オー!!、コナゴナニクダケテシマイマシタ!!!クヤシイノデワカゾウノフユノボーナスハ、ナシデース!!」
若僧が激昂して立ち上がりTommyを指差す。
若僧「チクショー、何だそりゃ、職権乱用だ。」
小娘がとりなしつつ言うも、いつものことなのかちょっと笑っている。
小娘「まあまあ。二人とも落ち着いて。」

 突然、店内に高らかな笑い声が響き渡った。
若僧はTommyの首を絞め、Tommyは若僧のネクタイを引っ張りつつ頭に噛み付いていたがピタッと両者の動きが止まる。

 笑い声の主は先生だった。
先生「うわぁーはっはっはっ。若僧、オマエは余程うまい棒の喰べ方を知らんと見える。」
若僧「何だとっ!!!」
先生は若僧の激昂を意に介さず泰然自若な態度を崩さず続ける。
先生「中年、アレを。」
中年「先生、宜しいのですか。」
先生「構わん。出せっ。」
中年が持ち出したのは蒔絵が施された手提げ箱。
一目で高価な品と知れる。
蓋を開け、紫色のサテンの布を開くと中から見慣れぬ道具が出てきた。

 眼鏡の男の眼鏡が一瞬怪しい光を放った。

---------緊迫の第2回に続く-----------

Cast
1)若僧:20歳代後半の青年。一応ネクタイ、スーツ姿だがちょっとだらしない感じの服装。「先生」と何やら確執がある様子。やや単細胞な性格。
2)小娘:20歳代前半の可愛らしい女性。時折見せる翳のある表情からは過去に何か深い業を背負っているのかも。
3)Tommy:天然パーマの小柄な40歳代男性。ちょっとお調子者の中間管理職。
4)部長:口髭をたくわえた50歳代の温厚そうな男性。一行の上司にあたる。
5)壮年の男(先生):総髪で着物を着た恰幅の良い男性。60歳代だが気力が充実しているためか幾分実年齢より若く見える。陶芸、書、絵画等の全てに於いて一流と称されている芸術家のような気がする。喰もまた芸術なりとの信念を持っているような。若僧を見下した態度を取っているが、何やら事情があるようだ。
6)御付の中年:角刈りの50歳代男性、先生の秘書的な役割をこなしている。若僧を様付けで呼ぶなど事情を知っている様子。
7)眼鏡の男:飄々とした立ち振る舞いながら何か一筋縄ではいかない予感を感じさせる謎の男。桜の代紋の入った手帳を某所で見せていたとの噂がある。何となく紅茶好きの予感。
8)キザ男:眼鏡の男の同僚。眼鏡の男の奇行に若干手を焼いている様子。どうやらええ家(し)の坊(ぼん)のようだが運転が荒い。
9)老齢の女主人:80歳に手が届こうかという年齢の割りに衰えを感じさせない外見を持つ。若僧にばっちゃんと呼ばれるなど親しい関係。先生と眼鏡の男とも前から交流があるようだ。
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